2008年03月28日

「雪見だいふく」はなぜ大ヒットしたのか 77の「特許」発想法 著者/重田 暁彦

昨日の続き

『登録「商標」と一般名詞のジレンマ』
商品の流行りすたりは世の常。様々な商品が出ては消えていきます。その多くに商品名すなわち愛称がつけられています。商品名は多くの人に知ってもらい、脳裏に焼きつくほうが良いに決まっていますから、大衆向け商品はテレビや雑誌などのメディアを使い、これでもかこれでもかと宣伝を繰り広げます。有名になったものに、やはり手が出るのです。広告効果を取り上げた多くの調査がありますが、地域や時間を区切ってPRをするとてきめんに効果があり、売れ行きが違うのだそうです。商品名の多くは「商標」として出願もされます。しかし、ヒットした商品の名前と商標の関係は結構、微妙なのです。 1948年に登場した「セロテープ」が良い例です。セロテープはニチバンが出したセロハンに糊をつけた透明なテープです。あれが登場したときはびっくりしました。それまでは紙が破れたら同じような紙をテープ状に切り、破れたところを糊で貼り合わせるのが当たり前でした。これが、透明なテープを上から貼るだけで良いのですからワーッと社会に浸透しました。そして、透明なセロハンテープに糊がついたものは総じて「セロテープ」として、家庭や会社などで使われるようになったのです。「セロテープ」のことを「セロハンテープ」とはあまり言いませんよね。 ここが問題なのです。「セロテープ」はニチバン(昔の日絆薬品工業)が登録した商標なのです。ところが皆がセロテープで通すものだから、商標が「普通の名称」となり登録は無効だと騒ぎだした人が出てきたのです。 「セロハンテープを略してセロテープというのは当たり前だ」 と騒がれました。ワードプロセッサーを、ワープロというようなものだというのです。しかし、ニチバンはセロテープのセロは、宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」のセロだといって、単なる短縮語ではないなどと反論していました。 登録された商標でも、通常に使われ普通名称化してしまうと、商標権を主張できなくなるおそれがあります。いつも「登録商標であることを表示しておくこと」が大切です。 ヒット商品で普通名称になるおそれがあるくらい有名なものには、「ホッチキス」(マックス)、「シーチキン」(はごろもフーズ)、「エレクトーン」(ヤマハ)、「サランラップ」(旭化成ホームプロダクツ)、「バンドエイド」(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、「ポリバケツ」(積水テクノ成型)などがあります。 ソニーのウォークマンなどもそうでしたね。新聞のチラシなどでは、「ウォークマンタイプのテープレコーダー」なんて書いてあるものもありました。もっとも今は、iPodのほうが有名になってしまいましたが。また、デジタルカメラは、「デジカメ」と略すと三洋電機の商標になってしまいます。 海外にも、同様の例はあります。 第二次大戦後、「駐留軍」といわれたアメリカの兵隊さんが乗り回していた愛車に「ジープ」があります。映画好きなら、戦争シーンで悪路をものともせず駆けめぐる四輪駆動車を知らない人はいないでしょう。辞書を引けば「ジープ:軽快強力な軍用車」などと出ていることも多いのです。しかし、この「ジープ」はアメリカ・クライスラー社の登録商標なのです。クライスラー社以外では、この名前は使えません(一時期、三菱自動車がライセンス生産していましたが)。 近年、最大の発明といわれた「ナイロン」も辞書に載っています。これは世界で最初に作られた人工合成繊維で、1938年に「クモの糸ほど細く、鋼鉄よりも強い糸」として鳴り物入りで登場しました。アメリカのデュポン社のカロザース氏の発明です。 発売後すぐに忘れられてしまう商品と、商標ではなく、商品一般を表す名前だと思われるほどにヒットし過ぎた商品、どちらが良いのでしょうかね。(ここに引用した商標はかならずしも一般名詞ではなく、いずれも有効な登録商標です。蛇足ながら付記しておきます) (P170〜P173)

ここに紹介した、一般名詞化した登録商標といって私が思い出すのは、イギリスの「バーバリ」のコートです。実は小さい頃の私は、「バーバリ」とは、コートそのものを表す一般名詞だと思っていました。なぜなら、私の両親も、周囲の大人たちも、コートであればどんなものでも全部、「バーバリ」と呼んでいたからです。「バーバリ」が、一般名詞、つまりコートの別の呼び方ではなく、イギリスのメーカーの商標だと知ったのは中学生の時でした。

ある本(何の本だったかは忘れましたが)バーバリが普通名詞ではなく、イギリスの有名なメーカーの名前だと知った次第です。そして上京してきてから、こちらの人が「バーバリ」以外のコートを「バーバリ」とは呼ばないのを知り、これまたある本を読んで(こちらも何の本かは忘れましたが)何故、私の故郷の田舎の両親や周囲の大人たちがコートを総てバーバリと呼んでいたのか理解しました。

その本によると北海道では、「バーバリ」がコートの代名詞として、通用しているとの記事をがあったのです。何故、北海道でのみ「バーバリ」がコートそのものを指す一般名詞化したのか、その理由までは残念ながら書かれてはおりませんでしたが。私はもう北海道とは20年以上ご無沙汰していますから、現在の北海道民も、コートを「バーバリ」と呼んでいるのかどうかまでは、あいにく承知しておりませんがね。 〔講談社+α文庫〕



重田 暁彦
1944年、横浜市に生まれる。神奈川大学工学部を卒業。富士通(株)にて特許出願・調査、特許管理業務、及びコンピュータによる技術管理システム・特許情報検索システムの開発に従事。特許企画部部長を経て退社。日本知的財産協会知的財産情報委員会委員長・研修講師、(社)発明協会委員・講師・知的財産管理アドバイザー、会津大学客員教授、日本大学大学院非常勤講師、日本パテントデータサービス(株)顧問などを務める。著書には『ゆかいに発想』(日外アソシエーツ)、共著には『情報の検索とデータベース』(電子情報通信学会)、『特許管理評価システムとその利用』(発明協会)、『実践的特許公報の読み方』(情報科学技術協会)などがある。
posted by 管理人 at 07:00| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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