2007年04月27日

度胸で勝ちぬく中国ビジネス 著者/高橋基人

《「ダイキンは空調機のベンツや!」の殺し文句で中国人の消費意欲を直撃し、中国市場における最後発のハンデもなんのその。たった三年でシェアNo1の座を鷲掴み!狭い日本にゃ住み飽きた!中国にゃ十三億の市場が待つ!とばかりに中国市場に挑みかかった強烈無比の大阪ド根性商人奮闘記》

北京五輪が間近に迫り、中国の世界に対する鼻息は強さを増すばかり、中国政府や一部のマスコミや経済アナリストが喧伝する中国経済の止まることを知らないかのような成長が、はたして真の中国の強大化、すなわち世界経済で日本を追い落とし、アメリカに拮抗する超大国と化すことの確実な裏付けなのか、それとも数字と情報の操作によって演出された中国政府によるハッタリと、世界中の投資家の幻想に寄って立つ砂上の楼閣、バブルの塔なのか……。

今や世界の資源と資本にとって台風の目とも言える中国経済。台風の名のごとく、その進路如何によっては日本や韓国、台湾に重大な影響を及ぼすものであり、ありとあらゆる情報網を駆使してウォッチすることが日本の現在及び未来の吉凶を判断する上で必要不可欠であります。

さて、そんな中国に知恵と度胸と笑いド厚かましさとを武器に闘いを挑んだコテコテの大阪商人・高橋基人氏。典型的な猛烈社員・企業戦士として日本の高度経済成長を生き抜いてきた高橋氏が、バブル景気崩壊後、誰も彼もがショボくれていた日本社会を尻目に1990年代半ばに敢然と飛込んだ中国社会。当時の中国ではほとんど無名の空調機メーカー・ダイキンを「空調機のベンツ」ともいえるほどの高級ブランドとして認知させ、中国市場ナンバー1を獲得したサクセスストーリー。無論その道程には汗と涙と笑いと緊張と怒りと苦労と友と……。

数々の試練と難問に立ち向かい、中国4000年の交渉術とタイマン勝負を展開した大阪ド根性営業マン!ギター侍ならぬ、エアコン侍の中国戦記をご覧あれ!

◎内容抜粋
『危機一髪の恐怖体験』
「大金さんは、電話局に強いらしいですね」 ある日、東北(山口註:中国の東北地方、黒龍江省・吉林省・遼寧省の三省を指す。旧満州)にあるK市の郵便副局長がそういってきた。 「そうですねん。日本のNTTの電話交換機に使われている空調の85%はウチの製品。私は以前、日本でそれを担当してましたんや。北京の郵電にも大金の製品いっぱい入ってますけど、あれ、私が指揮したんです」 電話交換機は、物凄い量の熱を発する。この熱をいかに処理するかが非常に重要で、一つ間違えると交換機がダウンし、電話回線が使用できなくなってしまう。そのため、空調には高度なノウハウが必要で、当時、日本ではダイキンと日立製作所しかその技術を持っていなかった。長い間、NTTを担当し、すべてを熟知していた私は、北京に来てすぐ郵電に攻勢をかけ、売り込みに成功していた。 「じゃあ、一度、ウチの局長に会ってくれませんか」 二つ返事で了承し、通訳を引き連れ、すぐに飛行機に飛び乗った。 「ウワッ、何やこいつは!」 通された部屋に現れたのは、大男だった。身長は1メートル90センチ以上。醜男だが、堂々たる体躯、まさに容貌魁偉。さすがの私も呆気にとられたが、その男こそが件の局長だと紹介され、早速、商談を始めた。だが、どうも相手の雰囲気がおかしい。話声は普通なのだが、話し方や言葉の節々になにやら相手を威圧する危険な匂いが溢れている。同行の通訳に、小声で言った。 「これは普通の局長やない。ちょっと調べてきてくれ」 たまたま近隣にある共産党青年学校の校長を知っていたため、彼に電話して、何者か尋ねてこいと命じたのだ。通訳はすぐに帰ってきた。が、メモを渡す手は小刻みに震えている。 “マフィア。現役の親分” つまり、黒社会のゴッドファーザー。 私は、腹を据えた。 「タカハシさん、葉巻はお吸いになりますか」 「家ではたまに嗜ますが、外ではやりませんなあ」 「それなら、今日は特別に一服お付き合い下さい。どうぞこちらへ」 局長室で本人が座る机を挟んで話をしていたのだが、こっちへ来いという。(葉巻を前で手渡してくれたらええやん。何するつもりや!) 相手がマフィアの親分と知った私は、十分に警戒しながら近づいた。 「その前に、これを」 大男は机の引き出しをバンと開けた。 「!!」 思わず息を呑んだ。中には、黒光りする拳銃が二丁。中国では「黒星」の名で知られる、中国製トカレフだ。 「どうぞ一つ、持っていってください」 「いやいや、ご好意はありがたいが、受け取れませんなあ。日本では銃刀法違反で犯罪になってしまいますから」 内心、ドギマギしながらも、平静を装い、そういった。大男は穏やかに笑い、頷いた。マフィアが拳銃をくれるというのは、親愛の情の印なのだ。「それなら、今日はぜひ家に泊まっていってください。私はこの街ではちょっと知られた存在です。ぜひ歓待したい」 そう通訳する社員はブルブルと身体を震わせている。 「心遣い、ありがとうございます。せっかくですけど、今日は夜も仕事がありますねん。また次の機会に」 「そうですか。残念です。ところでタカハシさん、あなた、中国に嫌いな人がいるでしょう」 「そら、日本人でも嫌いなヤツ、いくらでもいてまっせ」 「そうでしょう。私にいってください。すぐに消してあげます」 社員の声が上擦ってきた。通訳する日本語のイントネーションがおかしい。 なに、ビビっとんや。これは親分一流のジョークやないか。相手がこちらを気に入り、受け入れた証だと確信した。こういうとき、イタズラ好きの悪い癖が出てしまう。つい例の減らず口を叩いてしまった。 「いや、それは危ない。はっきりいうて、中国の人は仕事が粗い」 「いやいや、私は最近、ソフトビジネスを身につけました」 「はあ?何ですか、それ」 「自然死に見せることもできます」 通訳は、鎌首をもたげた巨大コブラを前にして震え上がるネズミ状態。声は完全なハイトーンだ。私は背中をバンと叩いていった。 「しっかりせんかい!」 大男は高笑いした。商談は見事、成立。だが、部屋を出ると、ふと力が抜け全身が重く感じた。背広の下のシャツが、フルマラソンをした後のように、肌にベットリとへばりついていた。東北地方では銃のプレゼントだけづはなく、実際に銃口を向けられた絶対絶命体験もあった。その相手は、大男のような行政のドンではないが、地方議員も務める土地の顔役だった。他社のエアコン販売代理店をやっているということだが、施工設計に必要な設計士がおらず、技術・サービス力が不足しているのは明らかだった。ただ、商売はうまくしたたかで、やり手だという。その人物が、大金の代理店をやりたいといってきたのだ。 「タカハシさん、うちにも大金のエアコンを扱わせてくれないか」 「あかん、あかん。あんたんとこ、営業しかおらんやないか。施工でけへんとこには任せられへん」 「ウチは社員がたくさんいる。設計はなんとかなるよ。それに私はこの街で力を持ってる。VRVをバンバン売っていける」 「いま、VRVはテストマーケティングの段階で、これから高級ブランドにせなあかん。何か問題が起きたら困るんや。技術のない会社に売らせるわけにはいかんねん」 「私の会社が扱えばブランドになる。タカハシさんのお手伝いができる」 「いや、でけへん。VRVはルームエアコンと違うんや。技術第一や」 「ウチは信用第一。技術も頑張って、信用もちゃんと守るよ」 抜け目のない中国商人の顔で、手を替え品を替え、いつまでもしつこく食い下がってくる。だが、こちらも命を懸けて異国の地に乗り込んできたのだ。無理なものは無理。私はついにキレた。 「設計できるようになってから言わんかい!いま、おまえんとこに設計士、一人もおらへんのやろ。ゼロに100掛けたら、1にでもなるんか。うちのVRVには指一本触れさせへんで!」 一気にまくしたてるため、横にいる社員は同時通訳状態。最初は日本人だと甘く見ていた相手も、私の剣幕に一瞬驚いた顔をした。だが、侮辱されたと感じたのだろう、その本性を剥き出しにしてきた。静かな声で言った。 「あなた、随分、威勢がいいね。あんまり私を怒らせると、ただではすまないよ」 「おう、どうすまんのや。何でも受けてたつで」 無言で立ち上がる相手。脇にある机の中からは取り出したのは、鈍く光る黒星。安全装置をカチッと外し、静かに銃口を私の額に向けた。……たじろいではいけない。尻の穴をすぼめ、下腹にぐっと力を入れる。 「はよ撃たんか。外すなよ」 落ち着いた声で牽制しながらも、私は自分の額を指さし、相手の目を睨みつけた。銃口がぐっと前に突き出され、額に突きつけられる。肌に伝わるヒンヤリとした感触。 「撃てちゅうのがわからんのか。ワレ!」 相手の眼がほんの少し脇にそれた。 「……ガハハハハ!」 「……ワハハハハ!」 一瞬の静寂の後、どちらともなく発する笑い声。 「わかった。わかった。もういいよ」 相手は銃を下ろした。一緒に腹の底から笑い、肩を抱き合った。学生時代にずっと空手をしていた私は、相手と相対したとき、おおよその実力を判断できる自信がある。口調が変わった際、コイツは本物の任侠者だと感じ取り、絶対、撃たないという確信があった。結局、VRVの件は条件が揃ってからということで了承してもらい、代理店契約を結んだ。数多くの外資系企業が参入し、そのビジネススタイルも洗練されつつある中国だが、一足、地方に行けば、まだまだ旧来的な交渉が幅を利かせている。また、表では官僚や実業家でありながら、裏では黒社会の顔役などというケースが時としてある。これが中国ビジネスの面白さであり、恐ろしさでもあるのだが……。(P41〜P48)

ある時は黒社会の人間と、またある時は日本商品のニセブランド商品を売りまくる悪質便乗業者と、またまたある時には、日本企業の日本式経営方針に真っ向から衝突する中国人従業員達と熱いガチンコ勝負を繰り広げながらダイキンの名をを中国市場で定着させた熱血大阪商人の中国ビジネス風雲録! 〔双葉社〕


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高橋 基人
1946年大阪生まれ。1971年、ダイキン工業(株)入社。東京、大阪で空調営業に従事後、1995年、国際営業本部香港担当課長を皮切りに、中国ビジネスに深く関わる。1997年より、北京代表処首席代表兼事務所長として中国各地を奔走。2000年、腎不全のため帰国を余儀なくされ、人工透析開始。2002年より、空調営業本部渉外営業専任部長(中国・日本)。中国ビジネスのスペシャリストとして、働く人工透析者の代表として活躍するビジネスマン。
posted by 管理人 at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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