2007年04月18日

声に恋して声優 著者/小原乃梨子

山口氏の読みどころ

皆さんは記憶に残っている一番最初のアニメーションは何ですか?もちろんその人の年齢、世代によってマチマチでしょう。だいいち初めてといっても当然ながら小学校にも上がる前の物心がついたか、つかないかの頃の記憶なんか正確に覚えている人なんかいませんよね。

私の場合も何だったかは曖昧なのですね。『いなかっぺ大将』だったか『妖怪人間ベム』だったか……。多分、『海底少年マリン』あたりではないかと思います。私が自覚しているもっとも幼い記憶の年齢は4歳で、それ以前の記憶は思いだせないからこのアニメも多分4歳頃に視たものでしょう。

『海底少年マリン』は記録では1969年の放映となっていて、その当時、私は2歳のはずだから、『海底少年マリン』は再放送で視たのかもしれません。ちなみにご存じないかたに『海底少年マリン』とは何かを説明いたしますと、海を舞台にした冒険アクションアニメで、海をパトロールする使命をおびた紅いスイムスーツに身を包んだ少年マリンが、オキシガムという海の中でも呼吸できるようになるガムを噛みながら、ブーメランを武器にして、イルカのホワイティー、人魚のネプティーナとともに悪者をやっつけるというストーリー(この紹介文は一部小原乃梨子女史の文章を引用)です。

そして、おそらくは私の記憶に残る第一号のテレビアニメーションかと思う『海底少年マリン』の主人公マリンの役をしていた声優こそが、今回紹介いたします本の著者・小原乃梨子女史でありました。つまり小原女史は私の記憶に初めて登場する声優第一号ともいえるのかもしれません。

もちろんまだ小学校にさえ上がっていない幼児が声優なんて存在を知るはずもありません(声優ブームがおきてから久しい現在の幼児がどうかは知りませんが)。だから私が小原乃梨子さんの存在を認識したのは、かなり後になってから。多分『未来少年コナン』あたりからではないかと思います。

それ以前にも『タイムボカン』や『ヤッターマン』で小原乃梨子女史の声には馴染んでいるはずなのですが、『タイムボカン』『ヤッターマン』を見ていた時は声優の存在は知っていても、興味まではひかれませんでしたから、小原さんや他の声優さんの名前も知りませんでした。

声優の存在に興味をもつようになったのは、多分、宇宙戦艦ヤマトのブームからだと思います。そして小原乃梨子さんといえば誰しも思い浮かべるキャラクターといえば『ドラえもん』ののび太くんではないかと思います。これについてはあまりにも有名過ぎて言わずもがなかもしれません。

しかし、実を言うと私の場合は、のび太くん=小原乃梨子とはなりません。なぜなら私は小原乃梨子さんが、のび太くん役をやるようになった1979年からの『ドラえもん』は視ていないからです。

私が6歳の時、1973年から半年ほど日テレで『ドラえもん』が放映されていた事実を知る人が何人いるかは知りませんが、私にとっての『ドラえもん』のイメージはそちらなのです。ただ、私が声優の存在を認識しつつも、それらに関して強い興味を惹かれるようになったのは、上京後、演劇活動を開始してからでした。

声優として活躍している人達の多くが舞台役者出身で、私の周りの先輩や講師にも声優の仕事の経験者が何人かいて、話を聞くうちに自分もやってみたいと思うようになり、某有名声優が運営する養成所や、ワークショップで受講したりもしました。結局、そちらの仕事にはいくらもありつけずに現在に至るわけですが……。

さて、小原乃梨子女史は声優の、否、日本のテレビ放送の草創期から第一線で活躍する大御所役者です。本書で彼女が記す内容はまさに日本のテレビ放送の歴史書(当然ながら洋画やアニメなど声優の仕事に重点は置かれてますが)といっても過言ではないでしょう。

声優やアニメキャラクターにただ、ミーハー的に夢中になるだけではなく、そのアニメや声優の世界を築き上げてきた功労者の一人でもある小原女史の人生を読むことで、より素晴らしい世界を知ることができると思います。

◎内容抜粋
『チキチキマシン猛レース』
「ヒャァヒャァヒャァヒャァ』と、不思議な笑い声の犬のケンケンが大人気だ。ケンケンのTシャツや、アノラックを着た若者達を見かけるし、ファンシーグッズの店には、たくさんのケンケンが笑っている。70年に放映されたハンナ・バーベラのアニメ『チキチキマシン猛レース』は、映画『グレートレース』によく似た設定で、ユニークな十一台の車が抜きつ抜かれつの大サーキットを展開するスラップスティック・アニメだ。なかでも“奥の手”などというマジックハンドや、車のあちこちに妨害工作用の仕掛けを満載した、《ゼロゼロマシン》の二人、ブラック魔王とケンケンのコンビが抜群に面白く、放映当初から話題になった。ケンケンのあの笑いは、息を吸い込みながらの独特のもので、誰にも真似できない。 「わあ、もうダメ、気が遠くなる……」 と、本当に貧血を起こしながら、神山卓三氏が創り上げたものだ。英語版のケンケンは“マトリー”という名前で、ただ、「ガハガハガハ」と言うだけ。このアニメの主人公ブラック魔王は、何がなんでも他の車を妨害することに喜びを感じている憎めない悪役だ。声の大塚周夫氏がまた、べらんめえ口調で、あの手この手とギャグやアドリブをくり出すものだから、番組全体のボルテージは上がるばかり。そして、ナレーションの野沢那智氏。ナレーションは別どりだったのだけれど、みんなのエキサイトした演技を聞きながらの一人トーク。本当に彼はアラン・ドロンが持ち役だったのかしら?と疑いたくなるような、頭のテッペンから飛び出した高音で、早口にまくしたてる。そのテンポの小気味よかったこと。レースを走る他のマシンもそれぞれ特徴があって愉快なのだけれど、《ハンサムV9》に乗ったキザトト君の存在感は圧倒的だった。おねえことばを駆使するキザトト君は、広川太一郎氏。 「いつも、僕のセリフは、三つか四つしかなかった……」 と、本人はおっしゃるのだけれど、それでもみんなの記憶にぴったりと納まって忘れがたいのはさすがだ。そして私は、紅一点のミルクちゃん。おしゃれな彼女のために、パラソルやシャワーまでつけた、ピンクの愛車《プシーキャット》に乗って、かわいいお色気を振り撒くミルクちゃんを演じて私はちょっぴりご機嫌だった。『チキチキマシン猛レース』という楽しいタイトルをはじめ、キャラクターやマシンに、信じられないようなネーミングを考え出したのが、録音ディレクターの高桑慎一郎氏。 「日本人が見るんだ。つまらなかったら、面白くしちゃえ!」というのが、ハンナ・バーベラの作品をたくさん手がけている高桑氏の持論だったから、演じる私たちも、持っている力を全開して役を考え、創り出していった。型にはまらない高桑氏のキャスティングは、声優のほかに、喜劇、落語、映画と、あらゆるジャンルから適役を配して、独自の高桑ワールドを創り上げていった。チキチキマシンのブーム復活のおかげで、キャラクター達はモービルガスのCMやゲームにも度々登場するようになり、私もなつかしい声の仲間と会う機会が増えた。 「ボクはどんな声だったっけ!」 と言いながらも、画面にキャラクターが映ると、みな一瞬にして二十数年前にもどってしまうから、すごい。CMの録音は同窓会のような雰囲気で、高桑氏をはじめ出演者全員、本当に楽しそうだった。私たちの知らないところで作品は生き続け、再生する。フェニックスのようなアニメの強靭な生命力に、私はあらためて驚くばかりだった。(P161〜P164)

『タイムボカン・シリーズ』
75年の私は、『アラビアンナイト シンドバッドの冒険』で、元気なシンドバッドを、『宇宙円盤大戦争』では、佐々木功氏のジークフリード、私のテロンナで、結ばれぬ大人の恋を。と、あいかわらず、美女と男の子の間を行ったり来たりしていた。そんな矢先、思いがけないキャラクターが私を待っていた。『タイムボカン』のマージョ様! 竜の子プロの吉田竜夫氏、演出家の笹川ひろし氏、脚本の小山高生氏達の繰り広げる《タツノコアニメ》の世界へ、初めて私は参加することになった。『タイムボカン』の設定は、ヒーローと三悪の対決で、番組の最後には必ず正義が勝ち、悪のメカの大爆発!でおしまいになる。けれどなぜか三悪は生き残り、来週へ続く、というわけだ。私の役は、グロッキーとワルサーという二人の手下を従えた、美貌のナイスバディの女ボス、マージョ。初めての悪役に少し戸惑った私だったけれど、BB(ブリジット・バルドー)のような“可愛い悪女”にしようと、笹川氏とディレクターの水本完氏と意見が一致した。また、「バカ、ドジ、マヌケ!」と、手下を蹴飛ばすマージョ様のセリフは、 「アンポンタンとスカタンを足して二で割った、スカポンタンというのはどうかしら」 という、私のアイディアが採用され、後に女子高生の間で流行語になった。こうして、頭脳明晰、悪賢いグロッキーには、絶妙な間とアドリブの天才、八奈見乗児氏、力は強いけれど気のいいワルサーに、現在『ドラえもん』のジャイアンで子供達に大人気の、たてかべ和也氏という芸達者がそろい、三悪の大活躍がはじまった。『タイムボカン』のヒーロー達は、丹平が太田淑子さん。淳子は岡本茉莉さん、ペラ助は滝口順平氏、チョロ坊が桂玲子さん、「説明しよう!」の名ナレーターは富山敬氏。全員、経験豊かな方たちばかりだったから、それぞれが自分の役を面白くすることに命を懸けていて、アドリブなどもリハーサルでは明かさない。本番のためにとっておくのだから、みんな緊張する。毎回、全員のボルテージは上がるばかりで、それに比例して視聴率もうなぎのぼり、あっという間に20%を越えて、次の『ヤッターマン』(77)へと続くことになった。サラリーマンの週休二日制など夢だったその頃、「最近、パパは土曜日の六時半には、ちゃんと家に帰ってくるようになったのよ」 と、世のお母様達を喜ばせた原因は『ヤッターマン』だったという話が伝わっている。マージョ様はキュートなお色気で迫ったけれど、今や世界的イラストレーターとなった天野喜孝氏の描く『ヤッターマン』のドロンジョ様は、あやし気なマスクに膝上ブーツ、完全な大人の女性で、手下どもに君臨するその姿は、今までにないアニメのキャラクターだったし、毎回の爆発シーンで、彼女の胸の辺りがパラリとはだけた!といって話題になったのだから、思えばかわいらしい時代だった。スタッフ、キャストみんなでアイディアを出し合い、もっとこうしたら、と自由に話し合える心を許した仲間、それが八年間の『タイムボカン』シリーズだった。また、最初はワーストアニメにランクされていたのに、『ヤッターマン』の頃にはお母様方はもちろん、ボヤッキーの、「女子高生のみなさーん!」の呼びかけに応じるように、スタジオへセーラー服の大群が押し掛ける騒ぎになってしまった。そして、子供達の人気はゾロメカに集まった。悪のメカからくり出す、小さなメカがゾロゾロ行進する。 「カメ、カメ、カメ、カニ、カニ、カニ」 と、全員で合唱するのだけれど、困ったのは“鵜”。 「ウ、ウ、ウ」 と、繰り返しているうちに、みな、笑い出してしまってNG続出、とうとう今後は「ウ」は、もウたくさんということになった。『タイムボカン』シリーズは、当時人気のあった若手の声優の方々がヒーローやヒロインを演じることでも人気があったけれど、今大活躍の水島裕允氏、曽我部和行氏、三ツ矢雄二氏、土井美加さん、島津冴子さん、田中真弓さんなど、みんなボカン学校の卒業生だ。また、ドクロベエの滝口順平氏、作曲の山本正之氏の存在もユニークだ。滝口氏の「なんとかだベエ」という声と口調は古典的に語り継がれているし、惜しまれて95年に亡くなられた富山氏の、「説明しよう!」という軽快なナレーションは番組の顔だった。中日ドラゴンズの応援歌の作曲でも知られる、山本氏の主題歌はリズミカルで楽しく、しかもどこか日本的でなつかしい。若者の教祖的存在となったのも頷ける。再放送や再々放送で番組を見た若い人達が、カラオケで『タイムボカン』を大合唱しているというのも、今見ても新鮮だということだろう。時代を先取りしたギャグや、笑いのぎっしり詰まった宝箱のような『タイムボカン』シリーズの復活を願うファンの声は高い。いくつかのCDやビデオが作られ、ゲームやCMにも登場する機会が増えた。潮は満ちてきているのだろうか。テレビの画面で、元気で帰ってきた三悪の姿を見ることのできる日を、私も熱烈なファンの一人として楽しみに待っている。(P172〜P176)

本書は小原女史の出演作や、そのキャラクター、共演者のエピソード以外にも小原女史の幼少時から女優を目指した日々や結婚、出産、育児その他の家庭生活の泣き笑いの日々を綴っております。ちなみに小原女史は声優として今尚現役であるのみならず、後身育成のために数々の活動を手がけております。

ちなみに、かつて私の養成所時代の後輩が小原女史が主宰なさっておられる、小原乃梨子朗読研究会に一時期、参加していたことがあり、下北沢にある、北沢タウンホールで発表会をした時に観に行ったことがありましたが、朗読の他に芝居もあり、色々と趣向をこらしていて、なかなか楽しい発表会でした。参加者も年齢性別様々で趣味のサークルとして非常に良いと思います。朗読その他の表現活動に興味がお有りの方は参加してみてはいかが?(ここで推薦文的なことを書いてしまいましたが、私は小原女史のファンではあっても、女史の主宰する活動とは無関係です、念のため)  〔小学館文庫〕


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小原 乃梨子
posted by 管理人 at 07:00| 東京 ☔| Comment(3) | TrackBack(0) | 趣味 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
イエーイ、山口さ〜ん。のってるか〜い。新垣結衣ちゃん、かわいいよね。
Posted by 伝助 at 2007年04月19日 17:34
新垣結衣さんですか。確か『ポッキー』のCMに出ている女の子でしたよね。

まだ私は彼女が出演している作品の仕事に行ったことはありませんが、もし今後、その機会があれば、ご報告いたします。
Posted by 山口 at 2007年04月23日 00:06
新垣結衣さんに限らず、最近は一般の女性も美人・カワイイ人が多いですよね。
Posted by 管理人 at 2007年04月23日 00:13
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