2006年07月13日

化粧するアジア―華人都市の消費事情 著者・呉善花

◎当ブログ管理人が奨める読みどころ

【日系デパート前に集まる若者達】台北の忠孝東路に店を構える日系デパート、太平洋崇光百貨(そごう)の井上哲さん(董事務総経理・店長)から伺ったお話によりますと、かつての台北の百貨店も商店街をそのまま一つの器に入れたようなものだったことが窺われました。太平洋崇光百貨は1987年にオープンした外資系百貨店の第一号です。「私達が来る前の台湾のデパートは、単なる場所貸しにすぎませんでした。『私に10坪下さい』といえば『はいどうぞ』という具合に店舗スペースを切り売りする商売だったんです。しかも、たくさん売る自信があるという者から順番に、玄関に近い方から入れていました。ようするに、大きなビルにたくさんの店舗が入って、それぞれ勝手にやっていたのが、台湾のデパートだったんです」そごうが入ってきてから、台湾のデパートはみな日本式のハイセンスな統一イメージ・統一サービスをむねとするやり方に習うようになり、デパートのステイタスが一気に高くなったとのことです。「新光三越百貨では中年の方が高級品をよく買っていかれます。靴、化粧品、アクセサリーなどですね。化粧品では、エスティローダ、クリスチャンディオールなどがよく売れているようですが、おそらく基礎化粧品、スキンケア商品が売れているんだと思います。バッグよりは靴、ダイヤモンドよりは金や真珠が売れます。靴ではフェラガモに人気が集中していて、殆ど現地の方が買っていかれます」(新光三越百貨副董事長、後藤和栄さん)新光百貨は1992年オープンですが、1995年度の売上は約百十七元( 約四三三億円 )と第一位、太平洋崇光百貨は約百一億元(約三七四億円)と第二位。いずれも来客数は一日平均二万〜四万人ということですから、古くからの商店街もなんらかの対策を考えないと、益々デパートに客をとられていくことになってしまうでしょう。これまで、台湾には日本でいうミドルゾーンがなく、上層か下層かでしたから、デパートは専ら上層を相手にしてきました。特に中小企業の経営者には大金持ちが多いといいます。デパートでカードを発行する際の所得証明の金額はかなり低いものなのに、ベンツの最高級車に乗っている人がいたりするそうですから、相当に大きな規模の地下経済があるといえそうです。それでも近年、ようやく中流ゾーンが膨張してきました。若い人達の平均収入は七〜八万円といったところですが、華人都市の例に漏れず台北でも共稼ぎ家族が多く、また食費が安く、様々なアルバイトに精を出す人達が多いこともあって、可処分所得はみかけの所得以上のものがありそうです。また言うまでもなく、我がアジアの青年男女の例に漏れず、先端的なもの、新しいもの、流行に飛びつく気概も旺盛です。そうした状況からすれば、台北の旧来からの商店街は、この新しい世代にマッチしたお化粧を真剣に考える必要があるのではないかと思います。(P85〜P87)

【アーティスト・ブランド化粧品に流行の兆し】
資生堂、クリスチャンディオール、シャネルの人気が高いことから見ても、化粧品についても国際的な高級ブランド志向が強いといえますが、少々異なる傾向も見られました。それは、最近ではMACやエスティローダ等の、いわゆるアーティスト・ブランドの商品がかなり出回っていて、若い人達を中心によく買われている、ということです。アーティスト・ブランドの化粧品は、いまアメリカで大きく売り上げを伸ばしています。日本でも若い人達の間に浸透しつつありますが、いまひとつのようです。尤も、日本の化粧品市場に本格的に進出するには莫大な投資が必要ですから、日本を避けてアジアの方へ力を入れている、という事情が大きいようですが。それにしても香港駐在事務所長の廣田智さんは、この新しい波について、こんなふうにいっていました。「ちょっとしたブームですね。我々にとっても、かなりな脅威になるかも知れません。彼らは、広告は殆どせず、雑誌等に記事を書かせて話題性を作っていこうとします。そういうやり方でお洒落に関心のある若者層を獲得しています」資生堂、クリスチャンディオール、シャネル等の高級ブランド品は高価ですから、購買年齢層はどうしても高いものとなります。ですから、アジアの若い人達が日常的に買う商品としては、ローカル・ブランド等の一般普及品となります。アーティスト・ブランドの商品は、価格はその中間くらいですが、若年層と中間所得層にピッタリとターゲットをしぼったものといえるでしょう。そういう意味では、かなりの中間所得層の拡大をみせている香港でそうした商品が売れるのは、当然といえば当然だといえます。しかし、なぜ日本ではいまひとつなのでしょうか。また台湾でもとくにそうした傾向が顕著になっているとはいえず、韓国では全くみられない現象です。(P142〜P144)

尚、本書の初版発行は1996年です。(三交社)



目次
【上海・見果てぬ夢を追い続ける人々】
『上海の新興成金階級』『上海消費社会の様々な表情』『上海先端ファッションの現場』『小役人達の消費社会への反感』『中国人の価値観がひっくり返ってしまった』『日曜日のケンタッキー・フライド・チキンの盛況』『ボロボロのお札が流通する』『中国人組合員と徹底抗戦した日本人経営者』『困難が多い日系企業の社員教育』『眼前の事実に向き合った日本人と夢に向き合った中国人』他多数
【台北・台湾ドリームの生きる街】
『なぜ親日派が多いのか』『雑多混沌の喧騒と都市の化粧』『若者達のセンスの良さと大人達の野暮天ぶり』『晴れの場としてのファミリーレストラン』『デートの場に変身した日系の居酒屋』『華洋折衷レストランの可能性』『ローカル先端を刺激した日系百貨店』『小さくても社長になりたい』『女性の強さの秘密』『世界一日本が好きな人達』他多数
【香港・難民の伝統というバイタリティ】
『ファッション基地香港の虚像と実像』『香港人のブランド志向と日本人のブランド志向との違い』『香港人・韓国人・日本人の買い物センス』『化粧品と香りの文化』『香港の女性は世界一強い?』『社会に鍛えられた香港女性』『飲茶とおしゃべり文化』『個人主義ではない個人主義』『難民の習性から抜けきれない社会』『独自の文化をどう展開するか』他多数
【シンガポール・頭打ち消費からの脱却】
『モラルにうるさい政府の国民モラル』『日曜日のオーチャード・ロードに集まるフィリピン女性達』『明るい太陽の下のファッションと化粧』『流行現象のない街』『「買え、買え」一点張りの広告センス』『家族連れが多いファーストフード店』『シンガポール特有の「受験地獄」』『徹底した「知的専門能力主義」』『血縁主義と「会社ロイヤリティの低さ」との関係』『ビジネスと宗教・文化の関係』他多数
【消費の現場に何が起きているのか】
『常識を破る選択消費市場の拡大』『生活のための外食と共稼ぎ』『活発な女性の労働参加』『旺盛な消費意欲と可処分所得の大きさ』『現代華人都市の特徴』

呉 善花
韓国済州島生まれ。1983年に来日。大東文化大学卒業。東京外国語大学大学院修士課程修了。ビジネス通訳や翻訳を通じて日韓ビジネスの現場を体験。
posted by 管理人 at 07:00| 東京 ☁| Comment(5) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コンバンワ、ミズモトです☆
この本、とっても興味深いです。
女性の大好きなコスメの話であり、覗いてみたいマーケティング裏事情のお話でもある。
しかも、いまホットなアジアのお話!
「知りたい欲求 がそそられます!

こちらのサイトの本のセレクションは どなたがなさってるんですか?
小難しくない、思わず読みたくなる本ばかりです!
 
Posted by ミズモト サチコ at 2006年07月13日 19:58
ミズモトさん、こんばんわ。
大変に多くの真面目なコメントや、お褒めの言葉を頂戴し、とても感謝しています。
ご質問にお答えしますが、当サイトは管理人と山口氏の二人で本を推薦しています。お互いに読書が共通の趣味の友人同士なので、マイペースで歩んで行きたいと思っています。
ミズモトさん、これからも宜しくお願いします。
Posted by 管理人 at 2006年07月13日 21:50
またきちゃいました☆コメント残しておきますっ♪
Posted by ヵぉ at 2006年07月14日 01:49
良かったら見てね 
Posted by ヘルシア88 at 2006年07月14日 08:38
はじめまして^^ヒマなときに覗いてくれたらうれしいな 
Posted by minami1980 at 2006年07月15日 10:39
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