2011年03月30日

セーラが町にやってきた 著者/清野 由美

昨日の続き

それは建国二百年を経て、自由と自立を誇りとする世界最強の故国アメリカが、持ちたいと願っても持ち得ない、敬意を表すべき小宇宙だった。

一日体験から年が明けた95年、セーラは北斎研究にいよいよ本腰を入れるようになっていたが、同時に秋に行われる利き酒師資格試験(山口注:利き酒師の「利き」は、正式には、口扁に利の字)に向けて、日本酒の勉強も開始した。

まだ好奇心の段階ではあったが、セーラは酒の世界に魅了されてしまったのだ。

「その気持ちは、酒の造り方をマスターしたいとか、人から認められたいといったこととは別のものでした。酒蔵の内部は神秘的な空間で、そこで働く蔵人の姿は凛として、とてもカッコ良かった。手間をかけて人が酒を造ること、その心と精神に私は感動したんです」外国人の自分に愛想を言うわけでもなく、ただ寡黙に仕事に励む蔵人たちは、誰よりも自分に似ていると、セーラは無意識の内に感じ取った。

会社の中でどうしても浮きがちな自分の心の拠り所を、この時、彼女はひそかに探り当てたのだ。(P92〜P94)

明日へ続く


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