2011年02月16日

塩の文明誌〜人と環境をめぐる5000年 著者/佐藤 洋一郎

昨日の続き

もちろん、そんな現代の塩場がいくらかあるとはいっても、野生動物にとっては塩が貴重であることはいうまでもない。

かつて旅人たちは山のなかを歩くときに草むらなどに放尿することを戒められていたと、民俗学者の宮本常一は語っている。

それは旅人が狼と出くわさないための戒めであるという。

草木の葉についた尿には塩分が含まれる。

それが乾くと塩になり、狼がそれを舐めにくるというわけだ。

いつも同じ場所に塩分があるということになると、狼もそれを学習してそこにやってくるようになる。

つまり人間の「道」を狼に教えているのと同じことになる。

同じ理由で、尿は、底のある甕などに蓄えてはないとされた。

それを狙って、野生動物たちが現れるようになるからだ。

動物の身体は生命としての活動を維持するため一定量の塩を必要としている。

尿や汗などで排出された分の塩分は、当然体外から補わなければならない。

とくに草食性動物の場合にはその傾向が強い。

というのも、後で述べるように、植物の体内にはカリウムイオンが豊富にあるが、動物体内ではカリウムイオンとナトリウムイオンのバランスがとられていて、カリウムが補給されればその分、ナトリウムも補給しなければならないからである。

植物を食べれば食べるほど、塩も必要になるのだ。

動物がまさかそうした「栄養学的知識」を持っている筈もなく、彼らは本能に従ってナトリウム、つまり食塩を欲する。

岩塩などが露頭した「塩場」に彼らが集まるのはそのためである。

肉食性の動物は、草食性の動物の血液などから塩分を補給するのでそれほどでもないが、草食性動物にとっては、塩分は水ほどに重要なのである。

だから、たとえば遊牧民は、長い旅の途中でキャンプを張るときに、水場とともに塩場を考えてその位置を決める。

塩が無いところでは、動物のために塩を運ばなければならなかった。(P37〜P39)

明日へ続く


posted by 管理人 at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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