2006年01月01日

模倣される日本―映画、アニメから料理、ファッションまで 著者・浜野保樹

「日本は外国の模倣ばかりしていて自分で創造をしない」、「日本文化にはオリジナリティーが無い」、「日本が世界に誇れるものは自動車や家電製品やカメラなどハードウェアばかりでソフトウェアが無いから日本人の“顔”が見えてこない」なんて批判は昔からよく外国人から、はたまた当の日本人自身からも声高に言われ続けてきました。

しかし、今や日本は“模倣する国家”から“模倣される国家”に変貌しているのです。バブル経済崩壊以降、10年以上景気回復を求めて迷走し続けて、最近、嘘か本当か景気が回復し始めたとの話しもありますが、そんな経済低迷の時期にも日本の文化、なかでもポップカルチャーは海外の人々からCool(クール・カッコイイ)と呼ばれるまでになった。

映画、アニメ、料理、ファッションを外国人たちが堂々と真似しだしたのです。いえ!本書を読むと思いの他、かなり昔から日本の文化や作品が海外に影響を与えていた事実が明らかになっています。

“『スター・ウオーズ』は、黒澤明の『隠し砦の三悪人』(1985)からヒントを得て作られた。黒澤が敬愛するジョン・フォードが『捜索者』(1956)で、インディアン(いまではアメリカ先住民という言い方が正しい)を悪者と設定して、映画の中で正義の下に虐殺し、無自覚に差別を助長してきたことを自己批判して以来、ハリウッド映画は特定の人種や集団を悪者と設定することができなくなってしまった。悪人を出すにはそれなりの説明が必要となり、ハリウッドが得意としてきた単純明快な勧善懲悪の映画を作りにくくなり、ハリウッド映画は人気をなくしていった。(中略)『スター・ウオーズ』は、もう一度単純明快な勧善懲悪映画を作る解法を与えた映画でもあった。SFであるために荒唐無稽な状況設定が可能となり、従来とまったく違う引用ができる。正義と悪の二項対立に引き戻し、映画の人気を脅かしていた新たな敵であるビデオゲームの魅力を取り入れ、単純なハリウッド映画の魅力を復活させた。そして『スター・ウオーズ』が手始めに引用してみせたのは、日本の黒澤映画だった。日本風の衣装、日本的な武闘方法、日本的な精神性を抽出し、再利用した。”(P22〜P23)

“『隠し砦の三悪人』の狂言回し、大平(千秋実)と又七(藤原鎌足)は、『スター・ウオーズ』ではC-3POとR2-D2のロボットになり、雪姫(上原美佐)はレイア姫となり、姫を助けながら進むというストーリーラインそのものも、『隠し砦の三悪人』からの借用だった。”(P24)

“『スター・ウオーズ』には、ハリウッドで流布している有名な逸話がある。ヨーロッパのある映画祭に出席していたジョージ・ルーカスは、黒澤明が会場にいることに気づいた。まだ二人は面識がなかった。名誉受賞のために黒澤は招待されていたが、そうと知らないルーカスは「なぜ、ここに黒澤がいるのだ」と驚いた。一緒に来ていた友人が「お前に著作権料をもらいに来たんだ」と冗談を言ったところ、ルーカスは慌てて逃げてしまった。あくまでも噂話だが、よくできた話だ。”(P25)

まあ、黒澤作品の模倣、焼き直しの類は日本でもクサルほどありますがね。つまり黒澤作品がそれだけ優れたモノだということでしょう。

“『マトリックス』(1999)が押井監督の『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』を元にして作られた事は、監督したウォシャウスキー兄弟自身が認めている。『マトリックス』のプロデューサーは、次のように述べている。「日本のアニメ『攻殻機動隊』を彼らが見せてくれたことがある。(略)彼らは興奮気味に、『今のを見たかい、僕たちはこれを実写で撮りたいんだ』と熱く語ってくれたことがある」(『Town Mook fx』)。彼らとは監督のウォシャウスキー兄弟のことだ。”(P49〜P50)

“『料理の鉄人』はアメリカでもCATV「フードネットワーク」で日本語題名の直訳の『Iron Shef』という題名で放映され、高い人気を獲得している。このネットワークで最も高い視聴率の記録を持ち、1998年、テレビ界のアカデミー賞と言われるエミー賞のポピュラー・アーツ部門にノミネートされたこともあった。日本では放送は終わっているが、アメリカでは繰り返し放映され、放映後に同じ料理を出すレストランが現れたり、キャラクター・グッズまで発売されている。”(P96)

“インターネットの検索サービス「ライコス」が、世界中のインターネット上で最も多く検索された言葉のランキングを毎年発表している。2001年、2002年は連続『Dragonball』が一番となり、ライコス発足以来初めて、二年連続一位となった。もちろん、鳥山明原作の漫画『ドラゴンボール』であり、そのアニメーション版の題名である。”(P155)

他にも著者の浜野氏は日本のポップカルチャーの世界普及の例を紹介しているが、ただし、だからといって単なる日本自慢を展開しているわけじゃなく、日本がいままで欧米崇拝、西洋かぶれをした結果、忘れたり、捨てたりしてきた貴重でかけがえのないモノや生き様についても本書の後半で切々と語っています。日本とは何か、私たち日本人にとって真に大切なものは何かを理解するために本書はお勧めの一冊です。



浜野保樹
1951年、兵庫県生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。メディア環境学専攻。
posted by 管理人 at 07:00| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(2) | 芸術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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