昨日の続き
『コハク・アスファルトの流通と使用目的』
【岡田】コハクも原石と完成品が出てきます。
【小山】コハクは何に使ったんですか?
【岡田】首飾りやペンダントです。コハクは同じ円筒土器文化圏で原料を調達できます。同じ文化圏で手に入れられないものは、入ってくるところが限られてきます。
【小山】アスファルトは?
【岡田】今までは、秋田県の旧八郎潟に近い槻木遺跡群の近辺がいちばん古いと思われていましたが、今見つかっているアスファルトの使用例でいちばん古いものは青森県内にあります。日本海側と太平洋側の両方で出ています。縄文時代前期の初めくらい(約6000年前)から出ていますが、原産地だからといってそこがいちばん古いとは限らない。逆に言えば、アスファルトが発見されたら、そのあたりで本当にアスファルトが湧いていないのかどうか調べてみる必要があります。
【小山】三内丸山では、北海道の南茅部のように、持ち込まれたアスファルトが多量に出るような状況はありますか?
【岡田】ないですね。ただ、隣の三内丸山遺跡からは出ています。アスファルトはほとんど消費されてしまって残らない場合が多いと思います。
【小山】南茅部の場合は、土器の中に貯められた状態で出てきますね。アスファルトは鏃と柄をつなげる接着剤だけに使われたのでしょうか?
【岡田】燃やすという考え方もありますが。
【小山】公害が起こりそう。証拠がありますか?
【岡田】アスファルトは塊で見つかりますが、実際に鏃にたくさん接着するかというと、そうでもない。多く見つかる遺跡と使用頻度とは、全く相関関係がありません。ということは接着剤以外の利用方法は、儀礼に使って最終的には燃やすのではないでしょうか。
【小山】わたしは疑問ですね。今は強い火力で点火することができますが、当時は無理でしょう。アスファルトを燃やした鉢や壺があるとか、証拠が欲しい。
【岡田】アスファルトは、熱すると固まったものがもう一度柔らかくなるものですから、あとはニカワの代わりに使ったくらいですね。一時、ニカワの代わりにウルシが使われたと言われましたが、ウルシはいったん固まると柔らかくならない。ですから、アスファルトがないと、漁撈具や狩猟具が発達しなかったと思います。(P60〜P62)
『一流の腕をもつ“縄文の漆職人”』
【小山】三内丸山の漆製品は、たくさん発見されていますか?
【岡田】他の遺跡に比べると多いでしょうね。
【小山】漆職人もいたんでしょうか?
【岡田】ここにはウルシの木もありますし、樹液を土器に溜めてあったものや赤色顔料も見つかっていますから、材料に関しては全部がここで完結します。無いのは塗る道具だけですね。
【小山】刷毛のようなものですね。
【岡田】それは、日本列島の縄文遺跡のどこからも見つかっていません。三内丸山では大量のウルシの種が出てきますから、ウルシの木はきちんと管理されていたと思います。
【小山】漆製品出現のいちばん早い例はどこですか?
【岡田】石川県田鶴浜町の三引遺跡ですね。
【小山】早期あたり?
【岡田】いや、前期の初頭ですから、約6000年くらい前ですね。三内丸山、鳥浜(福井県)、三引が漆製品が出た主要な遺跡ですが、土器編年で言うと、三引がいちばん古い。そして、鳥浜の漆器と三内丸山の漆器は作り方がよく似ています。 椀の口のところに凸帯という幅のある帯を回していますが、これは鳥浜と三内丸山の共通の形状です。漆器製作からも、日本海側を中心としたモノと技術の頻繁な移動が見えてきます。今は、ウルシのの中国起源説と日本起源説がありますが、日本起源説のほうが有力になってきている。佐藤洋一郎さんのDNA分析で、三内丸山ウルシの種は中国のウルシとは少なくとも種が違うことが解明されています。
【小山】漆塗りの第一人者の九戸眞樹さんがずいぶん前から言ってますが、ウルシを塗った木工細工はものすごく精巧なものです。縄文文化は木の文化ですからね。
【岡田】ウルシは今でも専門家がいて、素地をきちんとしないと綺麗に塗れないそうです。しかもトータルな技術が必要で、どこが欠けても成り立たない。
【小山】九戸さんの観察によると、縄文時代の漆製品は、現代の一流品と変わらないと言います。極論すると、ロクロを使ったんじゃないかというぐらい素晴らしい。やはり、三内丸山には漆職人の集団がいたと思いますね。こうして技術者や職人の姿も見えてくる。では、商人の姿はがどれほど見えてくるかという問題になる。(P62〜P65)
明日へ続く
2008年06月26日
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