昨日の続き
『死んだふりするウサギさん』
Q 先頃我が家でウサギを飼い始めました。ペットショップに、やたら可愛いウサギがいて息子が気に入ってしまったのです。ライオン何とかという種類で、まだ生まれて幾らも経っていないそうです。 このウサギ、我が家の人気者になったのですが、なぜか急にころっと倒れてしまいます。最初は急に死んだ野かと家族全員が慌てたものです。 数分倒れていますが、何事もなかったように起き上がります。これはウサギの習性なのでしょうか? それとも我が家のウサギだけなのでしょうか。(54歳、男)
A まず、ライオン何とかという品種ですが、ライオンドワーフかライオンロップでしょうね(ただのライオンという品種もあります)。いずれも首の回りの毛がライオンのたてがみのように長いのが特徴です。 前者はドワーフ(dwarf’童話に出てくる小人)というくらいだから小さく、後者はロップ(lop’垂れる)だから、垂れ耳ちゃんです。 ちなみにペットショップでの相場は、前者が1〜3万円、後者が2〜4万円とのこと。 ウサギの死んだふり……。別に、お宅のウサちゃんが特別というわけではありません。ライオン種に特有というものでもありません。 人によく慣れているウサギは、かまってもらいたくなると、飼い主の気を惹く死んだふりをするのです。 実際、『うさぎのき・も・ち』(森田米雄写真、どうぶつ出版)には死んだふりをしているウサギの写真が載っています。 つまり、人間の子供が、病気でもないのに熱を出すのと同じです。 我々哺乳類としては、母親から乳をもらったり、いろいろ世話をしてもらったりと、如何に他のキョウダイを出し抜いて親の世話を自分に向けさせるか、それが生存と成長にとって最も重大なことです。そこで甘えや嫉妬、自分に関心を向けさせる術などの心理や行動が進化してきているというわけなのです。 私はかつてミニウサギ(♂)を飼っていたことがあります。名前はカシコ。 オスなのにカシコとは、こは如何にと思われるでしょうが、初め性別がわからなかったのです。実は、ウサギやネズミのような哺乳類の子供の性別は、大変わかりにくい。オスの場合、睾丸が降りてくるのは何ヵ月も経ってからなのです。私はネズミの子供の性別はわかります。生殖器(といっても子供だから、何かちょこんと有るなあという程度)と肛門との距離。それが長いとオス、短いとメスなのです。 但し、一個体だけ見てもわかりづらく、いろいろ比較してやっとわかるという程度。 ウサギも同じ要領で判断できるのですが、カシコの場合、何しろペットショップで一目惚れ。性別をチェックすることさえ忘れて連れて帰ってきてしまったのです。そして、イヌよりもネコよりも賢くなれよという意味でカシコと名付けた次第。 そのカシコの最期はあっけないものだった。 ある朝、ケージを覗き込むと様子がおかしい。目は半開きで、体は泳ぐようにふらついている。 大変だ!早速近くの獣医さんに連れていったのですが、聴診器を当てられるや否や、ヒクヒクヒクと2〜3度痙攣を起こし、ピーンと体を伸ばしきってしまった。お腹はぺちゃんこ。 何が起きたのか……? 「もしかして死んじゃったんですか?」 「……そうだよ」 とその獣医さんは言い、「悪いねえ……3000円」。そして、ペット葬儀とペット霊園があるけどという話も。 ああ、それを遡ること9年前、建国記念の日に大阪、梅田の地下街のペットショップ(といってもちょっとしたコーナー)で2800円払って買った(当時、1日1000円で暮らしていた私には大金だった)カシコちゃんが、聴診器を当てられ、ショック死して、診察料3000円也。 飼い主に似て超恐がりのカシコに対し、なぜ、具合が悪いからお医者さん、などという単純な発想で行動してしまったのだろう。 考えてもみるならば、この私からしてそう。健康診断のとき、これからお医者さんが私の胸に聴診器を当て、心臓の音を聞くんだと思っただけで心臓がバクバクするのです。ただでさえ心臓が弱っていたと思われる、あの超恐がりのカシコちゃんが聴診器を当てられたら……ああ。 ところが、後になってわかったことには、ウサギほどショックに弱い動物も珍しく、ウサギお断りの獣医さんも珍しくないとのこと。ある獣医さんなどは、診察中にウサギを死なせたことが二回もあり、以来ウサギは診ないことにしたと言っているくらいなのです。 そんな悲劇を防ぐにはどうすべきか。まず、小さい頃からお医者さんに慣れさせることが一つの手。そしてそう訓練していない場合、特に、ある程度老齢のウサギの場合には連れていかない! 私はあのときカシコを、医者には連れて行かず、私の腕の中で眠るように逝かせてあげればよかった、と悔やんでも悔やみきれない気持ちでいるのです。(P272〜P276)
さて、本書のタイトルとなっている万世一系のひみつに関わる女帝論の是非についてですが…………それはやはり、本書を読んでのお楽しみということで。 〔文藝春秋〕
竹内 久美子
1956年生まれ。京都大学理学部卒業後、同大学院に進み、博士課程を経て著述業に。専攻は動物行動学。 著書に『男と女の進化論』『シンメトリーな男』(以上、新潮文庫) 『遺伝子が解く! 愛と性の「なぜ」』『遺伝子が解く! 頭はスローな方がいい』(以上、文藝春秋) 『浮気人類進化論』『そんなバカな!』『遺伝子が解く! 男の指のひみつ』『遺伝子が解く! 女の唇のひみつ』(以上、文春文庫)他がある。
2008年06月20日
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